
作品を作る時、
何か特別な場所へ向かうわけではありません。
けれど、
これまで歩いてきた景色や、
幼い頃に見てきた風景は、
今も静かに作品の中に残っています。
鳥や花、
池に映る光、
季節ごとに変わる空気。
そんな小さな記憶の積み重ねが、
一本の線になり、
一枚の切り絵になっていきます。
子どもの頃、
図鑑を片手に歩いた水上池。
名前も知らない鳥を見つけては立ち止まり、
季節が変わるたびに違う景色を楽しんでいました。
今思えば、
作品の中に鳥が多いのは、
あの頃の時間が今も心のどこかに残っているからなのかもしれません。
奈良には、
人の暮らしと自然が、
特別な境界もなく寄り添っている景色があります。
鹿が歩き、
古い木々が季節を知らせ、
遠くには歴史ある建物が静かに佇む。
そんな何気ない風景の重なりが、
自分の中では「奈良らしさ」そのものです。
派手ではないけれど、
ゆっくりと心に残る景色。
それもまた、
作品を作る上で大切な記憶になっています。

今は、
季節の花を植え、
野菜を育て、
鳥や虫たちが訪れる庭を少しずつ作っています。
幼い頃に見てきた景色を、
今度は自分の手で育てているような感覚があります。
花が咲くことも、
葉が落ちることも、
実がなることも。
その一つひとつが、
作品を生み出す静かな時間になっています。
特別な風景を探しているわけではありません。
身近な自然や、
ふと足を止めた時に見える景色。
そんな何気ない瞬間を、
これからも少しずつ心に刻みながら、
作品へと繋げていきたいと思っています。















