サンコウチョウ|刻の囀り<石賀直之オフィシャルウェブサイト>

切り絵日和
切り絵日和
切り絵日和

サンコウチョウ

私は、
まだ本物のサンコウチョウを、
ちゃんと見たことがありません。

子どもの頃、
図鑑を眺めては、
その長く美しい尾羽に憧れていました。

母に連れて行ってもらい、
他府県の山へ何度も探しに行きました。

双眼鏡を覗きながら、
木々の間を飛ぶ小さな影に胸を躍らせ、

「あっ!」

と思えば、
シジュウカラだったり、
メジロだったり。

結局、
その日も会えませんでした。

それでも不思議と、
がっかりした記憶はあまり残っていません。

「次こそ会えるかもしれない。」

そんな期待の方が、
ずっと心の中に残っています。

サンコウチョウという名前は、
「ツキ(月)、ヒ(日)、ホシ(星)、ホイホイホイ」
と聞こえる鳴き声から付けられたと言われています。

月と日と星。

昔の人は、
鳥の声の中に、
夜空や自然の景色を重ねていたのでしょう。

私は、
その名前も大好きでした。

美しい姿だけではなく、

鳴き声まで、
空や季節を感じさせてくれる。

そんな鳥が、
この日本にいるということが、
子ども心にとても不思議で、
とても誇らしかったのを覚えています。

今でも、
山を歩いていると、
ふと耳を澄ませてしまうことがあります。

もしかしたら、
どこかで鳴いているんじゃないか。

そんな小さな期待を抱きながら。

作品を作ることも、
少し似ているのかもしれません。

まだ見ぬ美しいものを想像し、
いつか出会えると信じて、
一本一本、線を描いていく。

私にとってサンコウチョウは、

図鑑の中にいた鳥ではなく、

子どもの頃から今まで、
ずっと追いかけ続けている
小さな憧れなのです。



※ サンコウチョウ(Japanese Paradise Flycatcher)は、
夏になると日本へ渡ってくる美しい渡り鳥です。

雄は非常に長い尾羽を持ち、
「ツキ、ヒ、ホシ、ホイホイホイ」
と聞こえる特徴的な鳴き声から、
「三光鳥」という名前で親しまれています。

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