
子どもの頃、
双眼鏡と小さなフィールドノートを持って、
野鳥を探しに出かけたことがあります。
見つけた鳥の姿を夢中で追いかけ、
名前を書き留め、
また次の季節を待つ。
その時間は、
今思えば、
作品を作る原点だったのかもしれません。

静かに咲き続けてきた花
そこに触れた光
心に残るのは そんな一瞬
私は、
鳥を正確に描きたいわけではありません。
花を図鑑のように残したいわけでもありません。
その時に感じた風や光、
季節の匂い、
静かな時間の流れ。
目には見えないものまで、
一緒に切り取りたいと思っています。

風に名はなく
ただ心に羽音だけを残してゆく
だから私の作品には、
花の中に鳥がいたり、
蝶が風を運んだり、
現実には存在しない景色が現れます。
それは空想ではなく、
私の記憶の中で、
自然がそういう姿をしていたからです。

幾つもの季節を重ね
羽音はやがて 一つの景色になる
このシリーズは、
花や鳥を作るためのものではありません。
私が見てきた季節や風景を、
紙という一枚の世界の中に
そっと残しておくための記録です。

静かに咲いた花も
空へ消えた鳥も
心に残ったその景色だけは
時を越えて形を変え
また新しい羽を得て
飛び立ってゆく
いつか、
誰かがこの作品を見た時、
自分の中にもあった
小さな自然の記憶を思い出してくれたなら。
それが、
私にとって何より嬉しいことです。

子どもの頃、
私が大切に持ち歩いていたフィールドノート。
その中には、
鳥の名前だけではなく、
その日見た景色や、
心に残った小さな出来事が書き留められていました。
ここでは、
作品の背景にある自然や、
私が出会ってきた小さな「記憶」を、
少しだけ紹介します。
一度も会えなかった憧れの鳥。















