校倉造|刻の囀り<石賀直之オフィシャルウェブサイト>

刻の囀り
刻の囀り
刻の囀り

校倉造

私は、
工芸品を見る時、

作品そのものだけではなく、
それを支える素材にも心を惹かれます。

木。

祖父の工房には、
いつも木屑の香りが漂っていました。

温かくて、
少し甘くて、
どこか心が落ち着く香り。

私は小さな木片を集めて遊びながら、

木というものは、
ただの材料ではなく、

生きている存在なのだと、
自然に感じていたように思います。

正倉院正倉は、
「校倉造(あぜくらづくり)」という建築様式で作られています。

三角形に加工した木材を、
井桁状に積み重ねていく、
古代の建築技法です。

私は最初、
どうして木でできた建物が、
千三百年もの間、
大切な宝物を守り続けることができたのだろうと、
不思議に思いました。

調べてみると、

木は湿気を吸うと膨らみ、
乾燥すると少し縮む。

校倉造は、
そんな木が本来持っている性質を利用しながら、
建物の中の環境を穏やかに保っていると言われています。

人が自然を支配するのではなく、

自然の力を借りながら、
共に生きていく。

私は、
そこに日本の工芸らしい美しさを感じます。

工芸というものは、

素材を自分の思い通りに変えていく技術ではなく、

その素材が一番美しく見える形を探していく仕事なのかもしれません。

それは、
私が切り絵を作る時も同じです。

紙という素材も、
湿度や光によって表情を変えます。

少し力を入れすぎるだけで、
簡単に破れてしまう。

だから私は、
紙と戦うのではなく、

紙が持っている美しさを、
一本の線として引き出したいと思っています。

祖父が木と向き合い、

古代の職人たちが木を積み重ね、

そして私は、
紙と向き合う。

素材は違っても、

その中に眠っている景色を探している気持ちは、
きっと千三百年前も、
今も、
変わらないのだと思います。



※ 校倉造は、
三角形に加工した木材を井桁状に積み重ねる古代建築技法です。

正倉院正倉はその代表例として知られ、
木材の自然な性質を生かしながら、
千年以上にわたって数多くの宝物を守り続けています。

PageTop